12月の特選奄美俳句5選No.15/2016.12

  • 2017.01.13 Friday
  • 01:48

2015年10月から始めている「今月の奄美俳句特選5句」の15回目です。

奄美で発行されている日刊紙・南海日日新聞の文芸欄「なんかい文芸」に掲載された12月28日から12月30日までの四つの俳句グループから出された作品から五句をえらんでいます。暖かい奄美もさすがに季節は冬に向かっています。(ルビは新聞掲載時の表記に従っています)

 

 

 

01. 年の瀬やヒャールガヤッサと霊おくる  石原兼

 

02. 朝刊のかすかな音や冬の路地          坂江直子

 

03. 綿入の妣の結び目解かずおく            登山磯乃

 

04. 松枯れに彩(いろ)なき島や冬の海       和学歩

 

05. 蛾眉(がび)なれど凛し中天寒の月       久松敬志  

 

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〈評〉

01/「ヒャールガヤッサ」とはなんだろう。丁寧に、心を込めてという意味だろうか。シマグチを有効に使った句である。「あまみ文芸」俳句欄に年に数句、シマグチだけの句、あるいは単語を使った句が掲載される。シマグチはまさにシマ(集落)の言葉なので、正確な表記と意味はその集落の人でないと共有されない。ヤマトで作られる俳句も関西弁や東北弁で書かれた俳句がある。そうした俳句は地元の言葉で書こうとする作家の意思がまずあり、その価値観に従って作句される傾向がある。殆どの俳人たちはいわゆる標準語(口語、文語にかかわらず)を使って書いている。こうした不文律の言語使用法が支配的ななかで、シマグチを使うのは、1.シマグチでなければ表現できない内容であること あるいは 2.シマグチを使うことで差異化を図ろうとする作者の意図が前面に出ている句、ということになろう。ありていにシマグチや関西弁を使うと、その恣意性が鼻につくが、この句は意味が分からないなりに、句として成り立っているといえよう。

 

02/若者は新聞を読まない。だから将来こうした早朝の光景は廃れていくのかもしれない。“景”が浮かんでくる句である。新聞配達は朝が早い。そして冬は音がよく響く。島尾敏雄の随想に名瀬で暮らしていた時、なぜか新聞が配達されない日が長くつづいたので不審に想っていたところ、ライバル紙を配達する少年が、島尾宅に配られた新聞を抜いていたことが判明したとの内容が綴られていた。いまでも人口12万人の奄美群島には二紙の奄美だけ発行されている日刊紙がある。それにプラスして県域紙(兵庫県でいえば神戸新聞のような)がある。奄美はまだまだ新聞媒体による情報伝達が有効な地域なのである。

 

03/“Mother”を意味する漢字の中でも、「妣」は亡くなった母(あるいは身内の女性)を意味する場合がある。あるいは母性を胚胎している根元的な女性をイメージして使われる場合もある。この句は前者であろう。家庭内で引き継がれる家事のなかで、亡き母が裁縫したことがわかっている綿入れをながめて、その運針のさまをみて、いとおしくなり、そのままにしておくという内容。こうした句は、家事をこまめに毎日こなしている人であるからこそ生まれる作品世界なのである。日常生活の中で、句材が豊富に潜んでいるという一例であろう。亡き人を想うことに関して今月は〈葬儀ミサ御堂に一羽冬の蝶 里原和子〉という句もあった。

 

04/奄美群島は松枯れの被害が大きい。いちど枯れてしまった松(琉球松)は、その樹木のありように、なにかの色という名をつけるということさえ躊躇するほど、いたいたしい姿になっている。それを「彩(いろ)なき」という表現をあて、松枯れした松ばかりではなく、島そのものも、うら寂しく想ってしまう作者の気持ちが「冬の海」を引っ張り込むことで、うまく表現されている。ゆたかな樹林がひろがる奄美の杜のなかにあって松枯れはよく目立つ。周囲の濃い緑色の樹林群のなかで、松ばかりが枯死してしまうことへの情感も込められている。色彩といえば今月は〈空よりも色濃き海や冬日和 宮山和代〉という句にもであった。

 

 

05/かつて美人の言い換えにも使われた蛾眉(がび)という表現。女性の美しく整ってカーブしている眉は、見る者もその美麗さに、眉だれの賛美だけに終わらせたくない心情となるのであろう。しかしこの句の場合の「蛾眉(がび)なれど」という表現は「満月のように丸々としていなく細いさまだけど」といった意味なのだろう。中天に浮かぶ三日月はそのあやうさの魅力ゆえにひとの目を釘付けにする。古今、月は多くの俳人たちに句を作らしめている。

 

 

 

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