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    3月の特選奄美俳句5選No.06/2016.03
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      春ですね。まだ朝は寒いのですが。
      去年10月から始めている「今月の奄美俳句特選5句」の6回目です。
      奄美で発行されている南海日日新聞の文芸欄「なんかい文芸」に掲載された3月30日から4月1日までの四つの俳句グループから出された作品から五句をえらんでいます。今回は奄美に一足早くやってきた春の季刊が満載です。

      01.余命てふ未来りありて青き踏む           西のり子

      02.二月尽晴れて琉舞の地方(じかた)かな    えらぶ安明

      03.闘牛の背に股がりて野路を行く          母子草

      04.波昏(くら)きやよいとまどう坂の町     福山文之

      05.春の水ラララ流れて瀬を跳ねる          緑沢克彦


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      〈評〉
      01/「余命」=短い生=詠嘆の表現といステロタイプなイマージュを横転させたこの句。「未来ありて」という表現が老境に身をおきながら日々を積極的に生きようとする姿勢がうかがえて好感をもつ。「青き踏む」=「踏青」は春の季語。冬を抜け出た春の勢いをそのまま表している。この季語を使ったものとして今月は〈即吟の句をあたためて青き踏む 吾亦紅〉を挙げよう。

      02/奄美に日舞の踊り手はいるが、沖縄・琉球文化圏ということもあり、伝統的な踊りといえば、琉舞が盛んである。徳之島-沖永良部島-与論島と南にいくにしたがって琉舞の近接度は高まっていくような気がする(沖永良部のフクラシャはこの島独自に発展している)。二月の終わり、琉舞の地方、つまり謡をパートを担当している作者をとりまく情景が一句に取り込まれている。徳之島の民俗研究者・松山光秀氏(1931-2008)は「奄美では歌〈=民謡〉には歌霊(うただま)が宿っているが、踊りにも「踊り霊」といったものが宿っているのです」と教えてくれたことがある。〈うららかや歌掛け合いの長寿会  寿山萌〉。

      03/かつて奄美大島でも徳之島から牛を借りて闘牛をしたことがあると聴く。しかし現在奄美群島で闘牛といえば徳之島である。1月5月9月の三回全島横綱決定戦が催され(この三回は旧暦の神月〈かみづき〉に起因しているのだろう)、それはそれは華やかで盛んである。横綱クラスとなると1トンちかくになる牛もいて身近にみると小山のように大きい。闘牛という“なぐさみ”を心から愛して島の文化にしているひとたちだからこそ一家(あるいは会社、学校同窓生)で持ち合っている闘牛への愛情が表現できる。

      04/俳句というジャンルを抜け出て鑑賞できそうな句。昏い波とは東北大震災の津波なのだろう。津波の映像はよくみる方だが、いままでの津波のイメージをくつがえし(波濤たけだけしくざんぶとやってくる高波のイメージだった)、次々と無言で押し寄せる黒々とした水の暴力的な固まりが津波の実態であることを知った。「やよい」は三月の別名。坂の町は東北太平洋側のリアス式海岸のどこでもいいだろう。阪神・淡路大震災の時は発生が夜明け前であったし、カメラ付き携帯電話もそんなに普及していなかったので、街が崩壊するさまは、東北大震災のように視覚的な映像としてそんなに多く残されていない。わたしが津波映像をよくみるのは、神戸の街の崩れようを津波映像で追体験したいがためなのかもしれない。

      05/特選句は設けない方針なのだが、今月はこの句を文句なしに特選句としたい。「ラララ」を使い、ことばのリズムも卓越していることを初めとして、春、しかも初春の躍動に接した悦びが句全体から感じ取れることができる。「ラララ」はわたしの世代にとって谷川俊太郎作詞の「鉄腕アトム」の歌で使われていることでしっかり脳裏に刻み込まれている。今月は、佳句に出会ったものだ。

       
      | 今月の特選奄美俳句5選 | 09:08 | comments(0) | trackbacks(0) |
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